八
八
「いえ。そうではなくて……」
母親は困惑したように視線を泳がせて、
「それを私に与えると、貴方が困るのではないですか?」
バーンハルトを見つめる。ふっ、と笑うと、
「人の心配をする余裕が、あんたにあるのか?」
マントを握った手を突き出す。母親は頭を深々と下げながら、
「ありがとうございます」
そう礼を言った。しかし、バーンハルトは、
「礼を言われる筋合いはない」
硬い声で答える。
「命令があれば、俺は人殺しも厭わない輩だ」
そして後ろを向く。
「今日は助けても、明日も助けるとは限らん」
闇を巻きつけた声で彼は答える。
砂を踏み締める音が、母親には悲しく聞こえた。